5月に訪れた群馬県中之条町・旧六合村エリア。

世立八滝をめぐったあと、もう一箇所、六合村の名所に連れていっていただきました。

前回まで
大仙の滝/段々の滝・群馬県【初訪問!新緑の世立八滝】
殺人の滝(世立八滝)・群馬県【噂のスーパーひょんぐり滝】
仙の滝(世立八滝)・群馬県【春の世立集落と六合名物蕎麦】

ガイドは引き続き野反湖うらやまガイドの木村正臣さん。
野反湖うらやまガイド 
http://yamaame.com/

やってきたのは「チャツボミゴケ公園」。2015年、ラムサール条約に登録された芳ヶ平湿地群の一部になります。

チャツボミゴケ公園についてはわたしはあんまり事前に調べていなくて、「ラムサール条約に登録されている湿地」「苔の景色が美しい」ということくらいしか、知識がありませんでした。ガイドの木村さんが以前講演の際、少し話をしてくださって「滝もありますよ」とのことだったので、いつか行ってみたいなあ、と思っていたのです。

でも、実際行ってみたら、滝だけじゃない。そして苔だけじゃない。想像以上にとってもおもしろかったんで、レポートしたいと思います!

まず、駐車場から園内のバスに乗って、遊歩道入口に入ります。

いきなり滝がお出迎え!「温泉大滝」だそうです。

落差は15mくらいかな?結構な水量でドドドドと落ちています。

あれがチャツボミゴケですよ!と教えていただきました。木村さんによると、なかなか良いコンディションだとか。チャツボミゴケの成長具合は、季節とかでもないらしく、予想が読めないみたいです。

滝ガールが滝景色にテンションが上がったところで、チャツボミゴケについての解説をしていただきます。

2015年のラムサール条約登録に続き、チャツボミゴケ公園は2017年に国の天然記念物に指定され、知名度もそこでグッと上がったそうです。強い酸性の温泉水が流れる場所でのみ育ち、世界中にある約1800種の苔の中で最も耐酸性の強い苔です…ということなんですが、この苔がすごいのは、それだけじゃないんです。

その理由は、これ。

遊歩道のすぐ脇に、赤い岩崖が見えます。これは、鉄山の跡なんですって。

この公園がある場所は、もともとは「群馬鉄山」と呼ばれる褐鉄鉱(かってっこう)鉱床として栄えていました。最盛期は国内第2位の生産量だったのが、昭和41年に閉山。露天掘りの採掘がされていて、その採掘場の跡に温泉が流れているのが、今ではこのチャツボミゴケ公園として保存されているそうです。近くには鉄鉱石を運ぶための駅もあったのだとか(旧太子駅という遺構があります)。

まずここまでで知らないことばかりで、大興奮のわたし。滝めぐりをするようになって、鉱山の跡が全国各地にあることを知って、近代史にも関心がわいてきています。滝からいろんな興味が広がっていくのが、滝ガール活動の醍醐味です。

でも、さらに驚いたことがあります。

「鉄鉱石をつくっていたのが、チャツボミゴケ」だということなんです。

え。どういうこと???

「バイオミネラリゼーション」という聞き慣れない言葉を教えてもらいます。「生物が鉱物を作りだす作用」のことなんですって。

鉄鉱石のもとは、チャツボミゴケ。コケが…鉄を…作る…???

聞いただけではよくわからなかったのですが、近年研究が進んでいる分野だそうです。コケがいろんな化学反応を経て、長い長い時間をかけて、鉄が生成されていく……。

って、めっちゃ地球のロマンじゃないですか!どういう仕組みなのかは正直よくわからないんだけど、面白すぎます。わたしの大好物です。

木村さんから「今も現在進行形で鉄が作られているんですよ」と。赤い石に変化しているところがまさにそうなのかな?

苔ちゃんたちの真実を知って、そわそわする滝ガール。いや、もはや苔ガールかもしれない……。ウルウルな苔を見つけては可愛い、可愛いとつぶやきながら、ずんずんと遊歩道を進んでいきます。

と、滝が見えてきました!

こちらは、「湯滝」と呼ばれているそうです。

チャツボミゴケの不思議にすっかり心を奪われていたわたしですが、滝が見えると大声で「ああっ!」と反応してしまいます(笑)。やっぱり滝ガールですわ。

ここも露天掘りの跡地に落ちる滝なので、自然の滝というわけではありませんが、温泉が流れ続けて天然記念物の苔に彩られ、現在進行形で鉄が生まれていて……なんていうのは、ここにしかない、ユニークな滝ですよね!

チャツボミゴケちゃんも、滝のそばだとなんとなく嬉しそうにウルウルしてる気がしちゃいます。

その先の山側にも、もう一つ滝が見えてきました。

「白絹の滝」。こっちは温泉成分ではない、普通のお水の滝だそうです。名前の通り、しなやかな優しい滝ですねぇ。

そして、遊歩道の終点がこちら!「穴地獄」です!

ここが公園で最大の群生地です。奥の方では、温泉が湧き出しているのを見ることができます。このボコボコのくぼみは、露天掘りの名残なんですね。

昭和の採掘最盛期の頃には、苔と鉄の関係は解明されていなかった。なんだかそう思うと、不思議な感じです!

当時鉄鉱石がたくさん必要になったのはやっぱり戦争のせいなわけで、その近代産業の歴史と、途方もない長い長いコケちゃんたちの歴史とを比べると、本当に地球って面白いなあと思うし、地球に住む人間もなんだか一回りして滑稽で面白いなあと思ってしまいました。

想像以上にいろんなことを考えさせられた、チャツボミゴケ公園。自然たっぷりの遊歩道を楽しみつつ入り口まで戻ってきて、最後に、温泉大滝にもう一度立ち寄りました。

鉱山の歴史とチャツボミゴケの不思議を知ってから眺めるとまた感慨深いものがありました。チャツボミゴケちゃんたちはこれからもここで鉄をつくり続けるんでしょうね。しみじみ…

チャツボミゴケの表情はその時々で変わるとのことなので、また様子を見にきたいと思います。

さて、ツアーの締めは、やっぱり甘いもので…☆ こちらの名物チャツボミゴケジェラートをいただきました。コケっていうから青汁みたいな味なのかと思いきや、予想を大きく覆すチョコミント味。おいしかったです!

今回のツアーでは、世立八滝で6滝、からチャツボミゴケ公園で3滝。合計9滝も鑑賞することができました。ガイドの木村さんも「こんなに滝に注目して回ったことはなかった!」とのことで(笑)。

大充実のツアーとなりました!どうもありがとうございました。

群馬・中之条の旅はあと少し続きます。

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