今回は「いい町」って何だろう、というお話。

滝の活動や仕事を通じてあちこち日本全国に出かける中で、地域のこれからに関心が向いてきているので、その方面でも動いています。都市と地域を、緩やかに健やかにつなぐこと。わたし自身も微力ですが、何かしら貢献したいなあ、と。

それで、少し前の話になってしまうのですが、北海道に行ってきました。目的地は、北海道旭川市の隣に位置する、上川郡東川町です。

このサイトの記事でも何度かご紹介しているのですが、わたしが心の師と仰ぐ立正大学の鈴木輝隆先生のご紹介で、東川町の視察ツアーをセットしていただいたのです。わたしの勤め先(投資会社です)のボスを一緒に連れていくことがミッションだったので、一応仕事ってことでしたが、個人の興味も大いにあります。

(ちなみに、前回の鈴木先生とのローカルデザイン視察旅、愛媛県の内子町石畳を訪ねた時のブログはこちら https://takigirl.net/archives/9118 です)

「東川がすごい」という話は鈴木先生に初めてお会いした時から話に出ていました。この20年間で約2割も人口が増えているんです。それも若い世代の移住者を中心に。「東川スタイル」という本が出ているくらい、まちづくりの分野では有名な場所です。

いざ訪れてみて、まず驚いたのがこの素晴らしい「絵になる」景観でした。東川は1985年に世界的にも珍しい「写真の町」宣言をしているのですが、なるほどこういうことか!と思いました。

大雪山の麓にあって、豊富な湧水があり、自然環境はとにかく素晴らしい!

旭岳ロープウェイにも乗りました!まだ雪景色!

旭川空港からもごく近いということで、立地としても恵まれています。

確かに、条件の良い町ではあるんですね。ところが、それに甘んじるわけではなくて、加えて、とにかくいろいろやっています。「写真甲子園」「東川米」「君の椅子」「ひがしかわ株主制度」「町立日本語学校」などなど……ここにしかないユニークな取り組みが行われていることは知っていたのですが、それらを実際に見させていただいて。やっぱり百聞は一見にしかずでした。全ての根っこにある「志」を感じることができたような気がしています。

その中から、いくつか挙げてみると…

こちらは「北の住まい設計社」。東川の廃校になった小学校を工場にして家具づくりを行っています。

敷地内にあるハイセンスすぎるカフェやショールームに感動しきりなのですが…

道産無垢材で作られている椅子は、ウレタンなどは使わず、木の呼吸を妨げないようにオイルなどの天然塗料を使っているそうです。

根底に流れるフィロソフィーは「永く使うこと」「自然のリズムと共に生きること」でした。それは、東川の町全体に通じる考え方。北の住まい設計社の存在は、町の文化を下支えしてきたんだろうと思います。

そしてこちらは、コーヒーショップ、ロースターコースターさん。

アウトドアが大好きで東川の自然に惚れて移住しちゃったオーナーのカールさん。店舗の老朽化もあってこのたび改装するんですが、新しい店舗の構想をいろいろと練っていらっしゃいました。さらに多くの人に愛されるアウトドアの拠点にしようと考えているそうです。

ブランド名のタイセツコーヒーは、「大雪」と「大切」をかけているそうな。

アウトドア愛好家たちが集う東川ですが、山を守り愛する人たちのコミュニティがしっかりと作られているのだなあ、と感じます。

そして、2014年にできたという新しい小学校もすごかった。

広すぎるグラウンド。校舎に隣接して体験農園もあって、地元の農家さんと一緒に米や野菜を栽培しているそうです。わたしもこんなところで育ちたかった!

学年ごとに開放的な教室になっていました。子どもたちが使う椅子や飾ってある木の工芸品は地元の職人さんによるものだそうです。

こちらの校舎は38億円もの予算をかけたそうで…!未来を担う子どもたちのことを最優先に考えていこうということの表れなのでしょうね。

町立東川日本語学校も、未来の東川を見据えて作られた施設。世界に開かれたまちづくり。目線が高い。そして広い。

あとはとにかく、おしゃれな個人経営のお店が、たくさんありました。おしゃれな人がおしゃれな人を呼んでいるんだなあ。

お宿、ニセウコロコロさん。

映えるソフトクリーム。NATURES SOFT SERVEさん。

いろいろと町を回らせていただいて感じたのは…一言で言うなら「自立」でしょうか。

自分たちは何を大事にしたいんだろう?
自分たちの強みって何だろう?
そもそもいいコミュニティって何だろう?

こういうことを、みんながすごく真剣に深く考えて、良いと思うものを実践しているかんじ。暮らしにまつわることを他人任せにせず「自分ごと」にしている。そして、とにかく「目線が長期」でした。

これが可能なのは、やっぱりベースを支える行政の力が大きいと感じました。現在5期目になる松岡町長をはじめ、ご案内いただいた町役場の方々はみなさん、めちゃアグレッシブだし、働くのが楽しそうなのがすごく印象的でした。

わたしたちのような訪問者にもすごくオープンで。住民を増やそうというだけじゃなくて、もっと広い意味で地域に関わる人を増やそうという考えのもと、「ひがしかわ株主制度」を作ったり、民間企業向けに東川オフィシャルパートナー制度を作ったりしてます。

役場の方がおっしゃていた言葉で「わたしたちはより良いルールを作るのが仕事なので」というのが印象的でした。「ルール」と聞くとわたしの場合は縛られて嫌だなあ、みたいなイメージがありましたけど、ここでは逆でした。前例にないことでも、みんながしあわせになるためのルールを一緒に考えてくれるパートナーだったら、そりゃとっても頼もしいです!

どうしてここまで徹底できるんだろう、と聞いてみると、やっぱり当初は大変だったみたいです。最初からこうは行かなかった、と。これまで10年、20年という月日がかかってきたわけだけど、地域づくりの先駆者としてずっと進化していくと思います。

わたしもすっかり東川ファンになりました。株主制度、申し込みます!

* * *

さてさて。最後になりましたが、滝ガールなのでもちろん滝の話。

東川町には、素晴らしい滝資源があります。わたしが最初に東川を訪れたのはこの滝がお目当てでした。

それが、日本の滝百選の、羽衣の滝!

●羽衣の滝・はごろものたき●
北海道上川郡東川町。落差270mは北海道1位。忠別川の支流アイシホップ沢川と双見沢川が合流する地点で絶壁を七段に分かれて落ちる。日本の滝100選。天人峡温泉から観瀑台までは徒歩15分ほど、遠望の展望台までは登山道で徒歩60分ほど。

天人峡温泉という温泉郷の奥にあります。柱状節理が絶景です。

以前わたしが訪れたときのレポートはこちら。当時は土砂崩れで下からの滝見台は訪れることができなかったんですよね。ようやく昨年、遊歩道が復旧したらしいということで、行ってきました。ちょうど冬季閉鎖が終わってオープンしたてというタイミングでした。

駐車場には、足湯もできてましたよ。

こちらは「涙岩」。

常に濡れている大絶壁の一枚岩です。 天女が羽衣を取られて泣いていた時の悲しみが、今もなおこの岩を濡らしているということから名付けられたそうです。

川の流れを横目に、テクテク。

歩いて10分ほどで…ちらっ!

みえてきました!

こちらです!

落差270m、やはりスケールがとんでもなかった!

大きい滝の特徴として、遠くから眺めているとすごくゆっくりと滝が落ちているように感じるということがあるんですが、その様子が貫禄があってめちゃくちゃ格好いいです。前回訪れた時は紅葉でしたが、緑の季節もいいですねぇ。

動画もどうぞ。

本当に素晴らしい滝だと思います。今回は遠望のスポットには時間がなくて立ち寄っていませんが、間近で見られる方の観瀑台に初めて来られて感無量でした。遊歩道を綺麗に直してくださってありがとう!

ただ、唯一寂しいこと。滝の入り口の天人峡温泉に悲壮感が漂っているということなんです…。

経営難で廃業しちゃったホテル。廃墟になってるのは印象が悪い(涙)。でも、取り壊すにも莫大なお金がかかりますからね。滝に一番近かったホテルも昨年からクローズしてしまっているようです。今営業しているのは、一軒だけ。

滝は本当に素晴らしいし、もっと日本だけじゃなくて世界の人にも見てもらいたい。温泉の泉質も素晴らしいし。だから何か打開策ないかなあ、でも難しいなあ…とモヤモヤとしながら帰路へ。なんとか東川町の元気がこの天人峡まで届いてほしい! 滝資源の活用を考えたい滝ガールとしては、最後はちょっと切なさも残る滝めぐりでした。