移住後の様子を綴る北杜の滝日記。10月も半ばを過ぎ、秋の深まりとともに鮮やかな彩りにワクワクする毎日を過ごしています。

今回は、少し前の滝訪問の話を…

9月30日、北精進ヶ滝に行ってきました!

●北精進ヶ滝・きたしょうじがたき●
山梨県北杜市武川町黒澤にある石空川(いしうとろがわ)に懸かる滝。落差121m。日本の滝100選。直下に九段の滝が続いて、さらに下流にも一の滝、二の滝、三の滝など複数の滝が続き、それら石空川渓谷と呼ばれる。駐車場から40分ほどで観瀑台。
来訪日:2022/9/30

日本の滝百選にも選ばれている名瀑です。同じ北杜市内といっても我が家からは一番遠い旧武川町エリアにあります。

実はわたし、この滝を訪ねるのは、なんと14年ぶり!なのでした。

このサイトを開設したのが2013年なのですが、実際に訪問したのはさらに昔の話。2008年のことでした。このときは小澤忠恭さんという著名なフォトグラファーの大先輩がご一緒してくださり、観瀑台のさらに先、滝の直下まで連れていってくださったんです(当時はどうだったかわかりませんが、いまは公式には観瀑台より先は「立入禁止」とされています)。

前回の訪問を記録したブログがこちら

北精進ヶ滝・山梨県【ガチ滝デビュー】

それからもう14年…。有名な滝ですし、こんなにスパンがあいたのはどうしてだろうと自分でも思っていたんですが、この2008年の感動をなかなか上書きしたくなかったというのもあるのかもしれません。

でも、北杜に暮らすことになったわけだし、そろそろご挨拶に行きたいなあ、と。思い立って、思い出の滝に訪ねてみることにしました。ひとりで。

14年前を思いながら

武川側から見た八ヶ岳!

「やっぱりうちからの八ヶ岳とは形が違うなあ…」とか、いっぱしに地元民っぽいことを思ったりしながら、精進ヶ滝林道を進んでいきます。

駐車場に到着!スタートはこの吊り橋から。

前回は滝の直下まで連れていってもらいましたが、そのときはけっこう駆け足でしたから、一の滝〜三の滝など、手前にある見どころも今回はじっくり堪能しようと思っていました。

ちなみにこの付近、ここ数年の間にヤマビルの棲息エリアになってしまったらしく。ここにも年月の経過を感じたりもします。念のためヤマビルファイターをシュッシュしてスタートしました!(今回は被害なし。ホッ…)

こちらは吊り橋からの眺め。やあ、山が深い…!携帯も圏外です。写真だとなかなか伝わらないかもしれないですけど、えん堤の規模も石空川渓谷のスケールの大きさを表している感じがしました。

山奥とはいえ、遊歩道は整備されていてとても歩きやすい。ありがたいです!

見上げると、健やかなパワーが降り注いでくる感じがします。

遊歩道を入ってすぐ、「フォッサマグナ」の看板がありました。前回は滝へまっしぐらだったんですが、今回はせっかくなので立ち寄ってみます。

あのチラッと見える地滑りみたいなのが、静岡から新潟まで続く大断層、フォッサマグナです!

これだけの大断層の近くだから、やっぱり大きな滝もできるというわけですね。

以前、糸魚川を訪れた際「フォッサマグナミュージアム」でダイナミックな日本誕生のストーリーを知ってすごく感動したんですが、そうか、フォッサマグナは北杜も通っていたんですもんね。そんな場所がうちと同じ市内に…なんだか嬉しくなります。

思えば、前回訪れた14年前なんて、地学的な知識もまったくない状態でした。大学生の頃から「滝好き」は自称していたけれど、どっぷりハマるまでには時間があいています。30歳くらいから精力的に全国の滝をめぐるようになって、地形のことや文化、歴史のこと、生き物のこと… そういう滝の周辺の知識も少しはつけてきたんだったなあ、と。ちょっと感慨深くなりました。滝との向き合い方が成熟してきた、って感じでしょうか。

素晴らしい景観の連続

さて、最初の滝が見えてきました!

わあ、わあ!

こちらが一の滝!(と、その先にチラ見えしてる二の滝)

「魚止めの滝」とも呼ばれています。落差は5mほどと大きくはありませんが、なんといってもこの滝つぼのこのグラデーションですよ… こんなにキレイだったとは! 白い砂浜のようになっていて、ゆらゆらと輝いています。

この時点ですっかり石空川のパワーに魅了されているわたし。

展望台までサクサク進もうと思ってたけど、一の滝がすでに思いのほか素敵だったもんで、ちょっとフライングでお弁当タイムに。道の駅で買ってきてたお稲荷さんをいただきました。

滝の前のごはんって、本当に美味しいんですよね…!

しばしのんびりしたあと、先に進みます!

橋の奥が二の滝です。

橋の上から鑑賞! 二の滝は「初見の滝」とも呼ばれています。

落差は15mほどで、なかなかの迫力! ゴツゴツと荒々しい岩盤を、三筋に分かれて落ちてきます。一の滝と同様、滝つぼはエメラルドグリーンでとってもキレイ。

二の滝の左側に急な階段がありまして…

階段から滝を上から見下ろすことができます!

この滝は上から見下ろすほうが迫力が感じられるかも!躍動感があって、男性的な滝ですね。

階段を登りきると、すぐに三の滝が見えてきます。

こんな感じで立派な橋がかけられていて、そこから眺める形。

「見返りの滝」と名付けられています。一の滝から三の滝までが美しい滝の連続だったので、確かに振り返りたくなる気持ち、わかりますねぇ。

上から見下ろす三の滝。

名前のついた大きな岩がゴロゴロ登場。巨岩が三つ並んで、「三つ児岩」。

こちらは、おにぎり石。マグマが周囲の岩石を巻き込んで固まったのだそうです。滝めぐりをしているとユニークな巨岩にもたくさん出会ってきましたが、ここの岩たちはかなりパワフルでした。

「竜洗峡」と名付けられたナメ床も見どころ!花崗岩だから白くて水の色が引き立って見えます。

美しいなあ…

神々しい大瀑布

そして、竜洗峡からさらに10分ほど登ると…

ついに、ご対面!

(先客がいらっしゃった)

こちら、北精進ヶ滝。東日本最大級の落差121m!

遠望でなかなか写真ではスケール感が伝わらないと思うのですが、奥を落ちるのが北精進ヶ滝、手前を段々に流れてくるのが九段の滝です。

九段の滝も十分に大きい!展望台からはこの二つの滝が連なって落ちているように見えるので、大瀑布の風格が増しているというわけです。前回訪れたときは、そもそも人生でこんなに巨大な滝を見たことがはじめてでしたので、ただただ、圧倒された記憶があります。

北精進ヶ滝を望遠レンズで。

風格あふれる凜としたお姿。流れの形は、那智の滝も彷彿とさせます。那智の滝は滝が御神体となっていますけれども、こちらも神様として崇めたくなるような、神々しさがありました。精進ヶ滝もその名の通り、かつては修行の場だったようですしね。

そして、九段の滝もアップで。

黒光りするゴツゴツした岩を跳ね回りながら落ちてくる、とても躍動感のある滝です。精進ヶ滝を神様とするのであれば、威風堂々とした神の使いたち、という感じでしょうか。

「滝ガール、引っ越してまいりました。これからも何卒、どうぞ宜しくお願い致します」

ご挨拶をさせていただきました!

帰り道で味わう深い余韻

14年前に訪れた際は、ここの展望台はあくまでも通過点であり、そのあと滝のすぐ下まで連れて行ってもらいました。自己責任のもと、沢を渡渉し、ロープを登り、大きく高巻きをして。出来事としての詳細となると、もうさすがに記憶がないのですが… ついに滝と向き合ったとき、涙を流して畏れにも近い震えるような感覚を抱いたことは覚えています。

でも今回は、「わたしはもう、滝の下までは行かないんだろうなあ…」と、しみじみ思いながら、帰路につきました。というのも、リスクをとりながらの滝めぐりというのが、わたしのスタンスには合わなくなっているからなんですね。

帰り道にもう一度、渓谷手前の一の滝とじっくり向き合いました。

ちょうど日が傾いてきて、光の演出が加わって滝はさらにドラマチックな姿。その情景がとにかく深く心に沁みてきたんです。

じんわり感謝が湧いてくる。この気持ちになれただけでも、わたしはもうこれで十分だなと思えました。この感覚をみんなに知ってほしい、とも…。動画、インスタでも紹介しました。

もっともっと日本の滝を知りたい、会いたいという純粋な気持ちから、全国の滝を旅してきました。そして、その様子をこのサイトでも長年、記録してきました。その中には、山奥すぎて訪ねるのが難しい場所もあって。そうした秘境の滝と対峙したときの感動は素晴らしいものでした。ただ一方で、山奥での道迷いや滑落、クマとかハチとか、さまざまな「命の危険」にさらされたことが何度かあります。

「困難を乗り越えてこそ、滝愛好家と名乗れるんだぞ!もっと鍛えなければ!」と頑張ろうとした頃もあるのですが… やっぱり心は正直であり、だんだんと「そういうのは自分のすべきことではないのかも」と感じるようになりました。わたし自身が、滝の「冒険家」や「修行者」ではなく、滝の「エバンジェリスト」でありたい、と自覚してきたんだと思います。

滝好きを自覚してから約20年。

ここにきて北杜という場所に移住を決断したのも、滝そのものの本質的な魅力を伝えてみたい、山深い場所でなくても誰にでも行ける身近な滝を通じて、より多くの人の心が癒されるようにサポートしていきたい、と強く感じるようになったからです。

今回の北精進ヶ滝でも、わたしは「あの巨大な滝の下に行きたい」という気持ちより、「誰かにこの一の滝の煌めきを見てほしい」という気持ちのほうが勝っているということに気づいたのでした。

***

リスクを冒しても滝の下に行ったという14年前の経験は、わたしをその後の未知なる「滝の道」へといざなってくれたとも言える、本当に貴重なものでした。

そして時を経て、「自分なりに滝と生きていくスタンス」を決めて、戻ってきたいまのわたし。

同じ滝と向き合っているからこそ、期間がこれだけあいていたからこそ、自分の変化が明確にわかるものなのかもしれません。これからの自分の生き方に対して背中を押してもらえるような… 不思議な余韻が残る滝めぐりとなりました。

この日もまた、滝の神様に感謝なのでした!ありがとうございました!