笛貫の滝・岩手県【宮沢賢治が描き出すおしゃべり滝】

笛貫の滝・岩手県【宮沢賢治が描き出すおしゃべり滝】

岩手の滝めぐり、続きです。

前回、花巻の名瀑、七折の滝のレポートをアップしましたが……
(こちら 七折の滝・岩手県【スーパーひょんぐり滝に会いにいく】

花巻といえば、

宮沢賢治

ですね!
実はわたし、子供の頃は本をあんまり読まなくて、なかでも当時はいやに現実的な思考だったので、ファンタジーっぽいものが苦手。宮沢賢治も童話作家、というイメージだけで長らくスルーしていました。

ところが、滝めぐりをするようになってから、宮沢賢治という存在がムクムクと浮かび上がってきました。それは、ほんとについ最近のこと。

わたしは滝めぐりを通じて、日本の自然環境の奥深さ、信仰との関わり、芸術への昇華、さらには宇宙の成り立ちというところに、だんだん興味の範囲が広がってくるようになってきました。

すると、宮沢賢治という人が短い生涯で手がけたあまりにもマルチな活動の背景が、俄然気になってきて……。いったい彼は何を見て、どんなことを考えていたんだろう? よくわからないけど、どうも気になる……。

そして今回、滝めぐりのあいまに、花巻の宮沢賢治記念館を訪れることができました。今年の4月に32年ぶりの全館リニューアルをしたそうなので、絶好のタイミングでした。

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館内の写真は残念ながら撮れませんで、記念館からの北上平野の眺め。

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うーん、面白かった!

賢治の世界観を科学、芸術、宇宙、宗教、農の5分野に分けて紹介するという、ダイナミックな構成。それぞれにリッチな映像がリンクしています。これって社会科見学の小学生たちには少し難しい内容のような気がするけど、とにもかくにも「なんかよくわかんないけど、すごい人だったんだ」ってなるだけでもいいですね。宮沢賢治初心者としては、これだけ多くの方々が、賢治研究に心血注いでいらっしゃるという事実にも、まずは感動しちゃいました。

展示を見ながら、いくつも気になる内容がありましたが、なかでも、
世界がぜんたい幸福にならないうちは個人の幸福はあり得ない」(農民芸術概論)
「生活即ち芸術の生がいを送りたい」(羅須地人協会の発足の談話より)
のあたりのフレーズは、最近考えてたこととリンクしすぎて、衝撃度、大。

ますます、賢治さんの宇宙に引き込まれちゃってます。ぽわーん☆

……と、前段が長くなりましたが、ここから滝の話。

幼少期から石マニアで地質学に精通していたという賢治さん。地質研究であちこち山を歩いているうちに、滝にも親しんでいたようでして、いくつかの物語に滝も登場します。

花巻では、創作のモチーフとされる滝も訪ねることができました。

●笛貫の滝・ふえぬきのたき●
岩手県花巻市大迫町岳川。落差10mほどの潜流瀑。滝の上部にあった岩穴を水が通り抜ける際に笛のような音を発していたため、この名が付いたと言われる。県道25号線から渓谷に下り(急坂)、5分ほどで到着。
来訪日:2015/9/20

秋色に染まる山道を抜けて……

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ここから、川へ下ります。ちょっと足場の悪い急坂です。

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川の向こうに……、見えてきました…!

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こちらです!

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地下水の吹き出し口がそのまま滝になるという、潜流瀑タイプ。わたしが見てきた潜流瀑のなかでも、かなり水量が豊富で激しいかんじです。

右側の小さな滝は、まさに穴から吹き出している様子が分かりやすい滝。

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こういうのはなかなか他では見られません。何やら神秘的です。
友人もその穴の奥を見極めようと、裸足になって近づいていました。立派な滝ガール☆

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さて、宮沢賢治ゆかりの滝、ということで事前に調べていたのですが、ここは「どんぐりと山猫」(『注文の多い料理店』収録)という物語に、「笛ふきの滝」として出てくる滝でした。

※「どんぐりと山猫」の話は、青空文庫でも読めます。(こちら

滝は物語の前半、主人公の一郎が山猫を尋ね歩くシーンで登場します。

ーーー
 笛ふきの滝というのは、まっ白な岩の崖がけのなかほどに、小さな穴があいていて、そこから水が笛のように鳴って飛び出し、すぐ滝になって、ごうごう谷におちているのをいうのでした。
一郎は滝に向いてさけびました。
「おいおい、笛ふき、やまねこがここを通らなかったかい。」
滝がぴーぴー答えました。
「やまねこは、さっき、馬車で西の方へ飛んで行きましたよ。」

ーーー

ぴーぴー答える、っていうのが、なんとも可愛い!!
滝を擬人化する、というのはわたしもしょっちゅうやっていることなので、すぐにイメージがわいてきます。

実際には、笛のような音は聞き取れませんでした。
賢治さんの時代にはもしかしたら鳴っていたのかもしれませんし、やっぱり鳴っていなかったかも。「穴から吹き出す」というところがかなりユニークな滝なので、実際ぴーぴー鳴っていたかどうかはともかく、創作的にぴーぴー言わせたくなるのも納得なのです。

さらに作中には、滝のほかにも道案内をしてくれる森の仲間たちが出てきます。「栗の木がばらばらと実を落とす」とか「たくさんの白いきのこが、どってこどってこどってこと、変な楽隊をやっている」とか……

で、考えてみると、これって、ちょうど季節的に今!なのでした。

たしかに栗の実はそこらに落ちているし(中身は既にリスさんが持っていった様子)、きのこもまさに絶好調。

賢治さんが同じように秋まっさかりのこの時期に川沿いを歩き、笛の滝に感銘を受け、創造力を羽ばたかせたのかしら!……と思うと、少しだけ彼が身近に感じられるような気がして嬉しくなっちゃいました。

滝自体の姿は、おそらく賢治さんの時代とそう大きくは変わらないはずです。

こんなふうに時を越えた創作とのリンクも楽しめるのは、そこにずっと有り続けてくれる滝のおかげ。滝はいつもわたしにとって新しい世界の扉を開いてくれる☆ 毎度のことですが、今回もまた、滝に感謝!なのでした。

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ちなみに、花巻にはもうひとつ賢治さんゆかりの滝、釜渕の滝があります。今回は行けませんでしたが、今度またぜひ!