今年の滝めぐり、振り返り編。

これもアップしてなかった。四国の轟九十九滝に続きまして、関西の名瀑です!

●布引の滝・ぬのびきのたき●
兵庫県神戸市中央区葺合町。生田川中流にかかる雄滝(おんたき)・雌滝(めんたき)・夫婦滝(めおとだき)・鼓ヶ滝(つつみがだき)の4つの滝の総称。雄滝は落差43mの名瀑。日本の滝100選。古来からの景勝地として有名。新神戸駅から徒歩2分でハイキングコース入り口。
来訪日:2014/7/26

新神戸駅から、歩いて行ける滝! 神戸に別件の用事があった際、帰る前にちょっと立ち寄りました。

新神戸駅の高架下をくぐって…

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2分くらい歩くと、もうハイキングコースの入り口。ここから登り坂を歩いていくんです。木々の間から高層ビルがチラチラのぞきながらの、なんだか不思議なハイキング。

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15分ほど登ったところにメインの雄滝があります。

こちら!

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上段が43mの雄滝、下段が9mの夫婦滝です。

雄滝は、何段かに折れながら落ちてきます。
明るい色の花崗岩の表面を、しゃらしゃらしゃら〜、と滑り落ちてくる様子が陽光に輝いて本当に美しい。広い滝壺もなんとも素敵な色です。この日は猛暑日だったのですが、滝の前だけクーラーがガンガンきいている感じでした。

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さて、この滝は、歴女的にも、面白い場所なんです☆

布引の滝は、古くから既に景勝地としてかなり有名なところでした。日光の華厳の滝、那智の滝とともに三大神滝と呼ばれていたそうです。そんなわけで、平安時代から、さまざまな歴史上の人物が滝にまつわる歌を詠みまくっています。その石碑と案内文が遊歩道のいたるところに立てられているので、これも見所のひとつ!

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平安時代から江戸時代にかけて詠まれた布引の滝の名歌の碑「布引三十六歌碑」。
明治時代に「花園社」という市民団体が最初に石碑をつくりました。その後散逸してしまっていましたが、神戸市が順次復旧を進め、2007年にすべての歌碑を復旧したそうです。

こちらが古いほうの石碑のようです。

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歌から想像して、当時のその人の気持ちになって滝に向き合う… 昔から愛されている滝だと、こういう楽しみかたができるから素敵です〜

なかでもそのストーリーを想像して楽しいのは、イケメン業平!でしょうか☆

狩野探幽『三十六歌仙額』より↓
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在原業平といえば、平安時代の歌人で、六歌仙の一人。情熱的な和歌の名手で、容姿端麗だったことがしっかり伝わっています。

業平は「伊勢物語」の主人公ともされていますが、伊勢物語の87段では、業平が布引の滝に来た様子をけっこう詳しく伝えているのです。当時、父の領地、芦屋に住んでいた業平が同僚と兄の行平とともに滝見物にやってきたときの話です。

お兄ちゃんの行平のほうは、今でいうと須磨へ左遷みたいなコトになっていて、京への想いを募らせて悶々としていました。そこで、業平が憂さ晴らしに誘ったというわけです。「いざ、この山の上にありといふ布引の滝見にのぼらん」と。

で、そのときお兄ちゃん行平が詠んだのが、こちら。

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我世をば 今日か明日かと待つ甲斐の 涙の滝といづれ高けむ 在原行平

現代語訳はこんなかんじ。
「世が自分の思いのままになるのが今日か明日、と待って流れる私の涙と、この滝の水とどちらが多いことかね――(涙)」

せっかく憂さ晴らしに誘ったっていうのに、未練たらたらです。兄ちゃんよ…。

対して、業平が詠んだ句がこちら。

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ぬきみだる 人こそあるらし 白たまの まなくもちるか そでの狭きに 在原業平

現代語訳は
「この滝の上の方で、玉を繋いでいる紐を抜いて、玉をバラバラにしてる人がいるようだね。白玉が絶え間なく飛び散ってくるけど、受け取る私の袖はこんなに狭いから、こぼれてしまうよね〜」
というかんじ。

滝を眺める兄と弟、キャラが、対照的!です。

悲しみに暮れる兄、滝を面白く愛でることで兄を慰めようとするんだけどイマイチ空回りなイケメン弟がイメージにわいてきます。弟も不遇は不遇なはずだけど、つとめて明るく!っていうのが伝わってくる。ちなみに、イケメンである、という設定は妄想のためには、かなり重要です(笑)

彼らが見た滝景色が、まさに今、こうしてライブで動いている! だからこそ、その歴史物語もぐんと、リアリティをもって楽しむことができるんですね。

1000年という月日。
人のつくったものは残っているものは少ないけれど、滝の姿は動きは、ほとんど変わりません。実はこれってすごいことじゃないかなあ。

時をつなぐ存在としての滝、というのも、あらためて評価したい!
歴史 × 滝、というテーマでも、来年はもっと調べていっていみたいと思います。