ボストン美術館浮世絵名画展北斎【滝の本質を突きまくる男】

ボストン美術館浮世絵名画展北斎【滝の本質を突きまくる男】

先週の日経新聞の生物学者・福岡伸一さんのコラム「芸術と科学のあいだ」に、北斎の描いた滝の話が載っていたよ、と、母が教えてくれました。好きなコラム欄なのでけっこうよく読んでいるのですが、この回、見逃していました〜!

北斎の遊び心とチャレンジ精神にスポットを当てている、とても面白い記事でした。

引用↓
「本来的に止まっている絵の中に、時間の流れを表現する。一見、矛盾するその難題にチャレンジした先駆者たちに心から敬意を表したい。またそのような試みの果敢さを前にすると、思わず快哉を叫びたくなるものだ」

わたしも、まさに北斎の滝の絵に、ブラボー!となっておりました。

現在、上野の森美術館で開催されている『ボストン美術館 浮世絵名画展 北斎』では、「諸国滝廻り」8枚すべてを見ることができます。わたしも開始早々に観ていました…! のですが、そういえばブログには書いてなかったことに気付きました。会期は来週末の11月9日まで! せっかくなので、感想もアップしておこうと思います。

これだけ北斎の作品がたくさん一度に観られる貴重な機会はなかなかなく、しかもボストン美術館所蔵とだけあって、色鮮やか! なかでも、当然というかやはり、わたしはこの「滝」コーナーでじっと足を止めてしまいました。

以前、日光の霧降の滝の記事でも北斎の滝の表現について触れたことがありますが(しかもそのコメントがきっかけで日経新聞に取材を受けるという、まさかの珍事も起きたのですが……)、この「諸国滝廻り」シリーズは、水の表現を生涯のテーマとした北斎の真骨頂が見られると同時に、自分自身でチャンレジを面白がる余裕すら感じさせる作品たちだなあ、と思うのです。

8枚すべて、オリジナル版で観られたのは、初めてでしたが、あらためて北斎のチャレンジの数々に、しびれます。

たとえば、『下野黒髪山きりふりの滝』のように、「流れを止めた描き方と、動きを表現する描き方を混在させている」ところ。動きのある滝を表現する方法として、斬新すぎます。滝の躍動感に魅せられた北斎さんを想像して、勝手にシンパシーを抱いたりも… 😕

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さらに、『木曾路ノ奥阿弥陀の滝』で、事件が起きてます。実物と違うものを描いちゃっているのです。

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実物はこちら。

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そもそも、北斎はこの滝、実物を「見たことがない」そうです。当時から有名な滝だったので、人から聞いた話、想像力だけで描いてしまった。実物を見なきゃ描いちゃダメなんて、北斎はそんな常識をふっとばします!ロックだぜ……!

しかもその想像力のおかげで、とんでもない傑作になってしまっています。

滝の落ち口の部分、ウニウニとした雲のような模様… これ一体、何なの?! よくわからない、だけど、何かはっきりと表現できない「滝のエネルギー」をこう描いてみたのではないのでしょうか。風景画と思いきや、突然、抽象画を滑り込ませてしまうところも、カッコいい……!

あと、シリーズ8枚通じて、わたしが好きなポイントが、「滝×人々」がしっかり描かれていることなのです。
いずれも描かれているのは、人々が生き生きと、滝と共に過ごしている情景です。

シーンはさまざま。
旅の道中で立ち寄る、ゴザをしいて滝見会をしている、滝のそばの観音様におまいりする、滝の水で馬を洗う……

人は滝から何かエネルギーを受け取ることで、自然と調和しています。

「なぜ、人は滝を見にいくのか?」ということ。この絵のストーリーを想像しながら、滝が江戸時代の人々にとって、どんな存在だったのか、わたしたちは推し量ることができます。それは、現在であっても、きっと変わらないことなのではないでしょうか。

滝の持つエネルギーを捉えたことで生み出された斬新な表現、そして滝と共に描かれる人々の喜び。滝が持つ純粋な魅力をあますところなく伝えてくれます。もう、素晴らしい滝エバンジェリストぶり!

滝好きの立場からも、滝の本質を突きまくる北斎に、あらためて、ブラボー!なのでした。
そして北斎という天才のココロを最後にわしづかみにしてしまった「滝」もまた、ブラボー!なのかもしれませんね 😆

ボストン美術館浮世絵名品展 北斎 | 上野の森美術館
<11月9日(日)まで!>

http://ukiyoe.exhn.jp/
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お土産に買ったグッズ。一筆書きと絵はがき。なかなか使えない(笑)
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